
>>> AM08:38。授業開始2分前の教室はいつもと同じように騒がしい。僕はこの時間に毎日同じ事を考える。外国のことだ。外国に行ってみたい。
>>> AM08:40。授業開始のチャイムが鳴った。同時に教師が教室に入り、生徒達は自分の席に戻って行く。変な横分けの国語教師。どこが変なのかは具体的には良く分からない。ただなんとなく違和感を感じる。
>>> AM08:41。日直の号令の後、授業は前回の続きから行われた。古文。教科書が無いのでそれ以上のことは分からない。
>>> AM08:58。僕の列の先頭の生徒が当てられ質問されている。2行程現代文に訳せと言われているらしい。彼は何も言えず、ただ机を見つめている。彼も教科書を持っていないのだ。
諦めた国語教師は自ら訳し、講義を続けた。
>>> AM09:09。2つ前の席の生徒が当てられ質問されている。助動詞の意味を問われているらしい。彼は何も言えず、黒板を見つめている。彼も教科書を持っていないのだ。
諦めた国語教師は自らその意味を言い、講義を続けた。
>>> AM09:17。目の前の席の生徒が当てられ質問されている。作品中の代名詞が何を指すのかを問われているらしい。彼は何も言えず、ただ前方を見つめている。彼は教科書は持っているが使用禁止中なのだ。
諦めた国語教師は自ら問いに答え、講義を続けた。
>>> AM09:21。名前を呼ばれたような気がした。ふと顔を上げると、教壇から国語教師がこちらを見ていた。口を動かし何かを話しているようだった。僕は聞き取れず、もう一度質問を繰り返すよう、国語教師に要請した。
この作品の時代背景を説明しろ、と彼は言っていたように聞こえた。僕はその質問に対する答えを持っていなかったので、それには答えなかった。数秒後、もう一度同じ質問が繰り返された。僕は数秒経過した後でもその質問に対する答えを提示することが出来なかったので、黙っていた。数秒後また同じ質問が繰り返された。僕は試しに言葉を発してみる事にした。しかし、何も話す事は出来なかった。下唇と上唇がくっ付いて離れないのだ。
とりあえず親指を突き上げ、国語教師をヒッチハイクする事にした。するとその行動を見た国語教師の表情が急激に変化の様相を呈した。まず怒りの表情、次に悲哀、慕情、驚嘆、最終的には恍惚の表情に変化した。彼はいみじくも勃起していた。僕はそれを鼻で笑い、前の席の生徒を片手で持ち上げた。持ち上げてみて初めて分かった事なのだが、この生徒は軽い。ざっと40kgだろうか。そこで後ろの席の生徒が僕らの間に割って入り、僕の行動を止めようとした。僕はそれに素直に従い、席に着いた。
>>> AM09:32。気が付けば既に授業終了を告げるベルは鳴り終わっていた。いつの間にか国語教師は教卓に戻り、日直に号令を掛けるよう促している。髪型にはやはり違和感を感じる。
夢でもみていたのだろうか。
>>> AM09:33。国語教師が教室を去って行った後、僕は先程の僕の行動について、後ろの席の生徒に質問してみた。彼は別に目立った変化は無かった、と答えた。それは具体的にどういう状況だったのか、と僕は尋ねた。いつも通りノートを取り、いつも通り教師の質問に的確に答えていた、と彼は言った。僕は彼にお礼を言い、彼から離れ自分の席へと戻った。
やはり夢でもみていたのだろう。白昼夢というものだろうか。
>>> AM09:35。自分の席で読みかけの小説を開いた。主人公の苦悩は昨日から何ら変化していない。髪型と体重について、彼はもう思い出せない程昔から悩み続けている。その苦悩の文章だけでページの大半は費やされている。5ページ程主人公の思考に付き合ったところでチャイムが鳴った。
>>> AM09:40。2時間目開始。既に英語教師は教室に来ており、号令が掛かるのを待っていた。号令係は英語教師の意味ありげな視線に気付き、驚いたように号令を掛けた。起立。ぱらぱらと椅子から腰を上げ始める生徒。礼。頭を下げるごく数名の生徒。着席。その声が聞こえた頃には既に全ての生徒は椅子に腰を下ろしている。同刻、英語教師は出席簿に目を落とし、欠席者を確認していた。
僕は教科書を5冊開いた。
>>> AM09:42。英語教師の髪型に気を奪われる。ただの天然パーマのセミロングなのだが、どこかに違和感を感じる。腑抜けた感じがする。親密感を感じる。愛国心を感じる。
僕は思考を停止させ、授業に集中する事にした。教科書に視線を落とした時、何かが視界に飛び込んだ。
>>> AM09:43。ミニスカート。激短のミニスカート。完全に下着が露出している。ことも何気にそれを着用している英語教師。僕は目を疑った。けれど、いくら目を凝らしてみても、それは確かに現実だった。現実に英語教師は、下着が完全に露出している激短のミニスカートを着用し、講義をしている。
僕は23歳独身英語教師に激しいエロスを感じた。
>>> AM09:44。睡眠開始。
>>> AM10:30。睡眠終了。同時に授業終了を告げるチャイムの音。号令の後、僕は教室を去っていく英語教師の後ろ姿を眺めていた。完全に露出している下着。胸が切なく締め付けられているのを感じた。どうやら僕は英語教師に恋してしまったらしい。
>>> AM10:32。教室の後方で怒鳴り声が聞こえた。振り返ると女子生徒3名が互いに胸倉を掴み合っている。
僕は勇気を奮い起こし、彼女等の喧嘩を止めさせる為席から立ち上がり、現場へ近付いて行った。
3名共メガネを掛けていた。それも全く同一のメガネだった。どうやら彼女等の喧嘩の原因はそのことにある様だ。
原因さえ無くなってしまえば彼女等も喧嘩を止めるだろう、僕はそう考え躊躇することなくその3つのメガネを窓の外に投げ捨てた。すると直後それに続けて彼女等も窓の外に飛び降りていった。
あとにはクラスメート達の、僕への冷たい視線だけが残っていた。


























